夜に燃ゆ 02

mudan tensai genkin desu -yuki

裏切りを血で洗い、更に裏切りを重ねる時代。
700年に渡る戦乱に大陸はいい加減飽き始めていた。
長きに渡る闘争はそれに勝利し続けた5大国を生み出し、他の国々とは一線を画する強国に育て上げた。
彼らと戦うより守勢に回る方が懸命だと判断したある国は独自の産業を重視し、ある国は貴重な鉱物に焦点をあて、 生き残った自国の地盤を固めようとしだす。
次第に戦争よりも将来訪れる平和の時代を見据えて動き出した国々とは別に、 だがそれでも、まだ逆転の可能性はあると思う小国もいくつか存在し ていた。
彼らは他国を標的に強力な一撃を求めて策謀をめぐらす。そしてその手段を禁呪に求めた国も確かにあった。
しかし後に彼らはヘルギニスの悲劇を知って、慌ててその禁呪についての企みを破棄することになる。

すっかり日が岩山の向こうに沈み、家々の明かりが灯りきったその夜。
ヘルギニス内の魔力密度は既に異様な程に高まっている。
魔法士であれば濃密すぎる空気に気分が悪くなってしまうくらいであるが、多くの人々はそれに気づかぬまま普段通りの生活がずっと続くものだと思っていた。
しかしその希望は脆くも砕かれることとなる。
城の最地下、聖女の神殿に立つ王は、水に浮かびながら眠る美しい魔女を愛しむような目で見つめていた。
「レオノーラ……お前の名は長く語り継いでやろう。この国の力となった魔女としてな」
魔女は答えない。
魔法装置の一部として取り込まれ完全に意識を封じ込められているのだ。
「始めろ」
王の命を受けて魔法士たちが一斉に詠唱を始める。
一人の騎士が弓を番えた。レオノーラに向かって狙いを定める。
打ち込まれた矢は4本。
それらは両手首と両足に寸分違わず突き刺さった。
水の中に魔女の血が染み出していく。
一種異様なその光景は、しかし神聖とも言える程美しかった。
何重もの詠唱が重なる。
構成が、濃すぎる魔力の密度にうっすらと複雑な構造を視覚化させた。王はその只中愉悦に目を細める。
だがまだ彼は知らない。
大陸に5人いる魔女。その内の残り4人が彼の居る城を中心として長い解呪の詠唱を始めようとしていることを。

東の街道を歩いていた少年はふと見上げて図書館の屋根に一人の女が座っていることに気づいた。
どうやって上ったのか、女は口笛を吹きながら夜空を見上げている。
魔法の明かりを灯した街灯が彼女の長い茶色の髪に朱金の艶を与えていた。
女は見られていることに気づいたのか、不意に視線を下ろすと少年に向かって手を振ってくる。
人懐こい笑顔の美人。だがその容姿が美しければ美しいほど、非現実的な異様さを感じて彼はぞっと身震いした。

西の山道入り口。近くにある民家に住む老女は夜になり庭の鉢植えを家の中にいれようと外に出た。
標高が高いヘルギニスは星が手が届きそうな程間近に見える。
思わずその輝きに気を取られていた老女は、視界の隅の岸壁に、浮かんでいる女の姿を見つけてぎょっとした。
長い髪を後ろで1つに縛った女は、刺すような視線で都市の中央にある城を睨んでいる。
威圧漂う姿に唖然とした老女が慌てて家の中に戻り、家人を呼んできた時、しかし既に女の姿は夜の中見えなくなっていた。

南の広場で屋台を店じまいしていた男は、いつの間にか広場の隅に一人の少女が座っていることに気づいて首を傾げた。
17-8歳だろうか。白金の髪に透き通りそうな白い肌。まるで人形のような美貌に男は小さく感嘆の声を上げる。
彼女は腕いっぱいに白い花束を抱えて木箱の上に座り、蒼い目を広場の石畳の上に固定していた。
そこだけ夢の中の領域が染み出しているような不思議な光景。
男は彼女が何をしているのか疑問に思ったが、売り上げを家に持ち帰る為に後ろ髪を引かれながらもその場を後にした。

北に配された共同墓地。その奥まった一角、柵の上に一人の子供が座っている。
夜に溶け入る漆黒の髪に闇色の瞳。感情の感じられない貌は等間隔で置かれた墓標に向けられていた。
少女は口の中で小さく何かを呟いている。
やがてその視線が町の時計塔を捉え、針がきっかり7時を指し示した時、彼女はおもむろに立ち上がると詠唱を開始した。

城の神殿で詠唱を重ねていた魔法士たちは、開始から10分、ようやく違和感に気づき始めていた。
目の前の魔女からは恐ろしい程の魔力が溶け出し、それは国全体に敷かれた魔力の流れによって既に街中を覆っているはずである。
そして今、魔女の血液を触媒に更なる魔力を召喚しようとしているのだが、一向に魔力が1つのものとして結実しない。
むしろ拡散しているような気さえする。
訝しく思う気持ちが表情に見え出し、同志にそれを見て取った魔法士の間で集中が乱れ始めた、その時
突然、一人の兵士が飛び込んできた。
兵士は王の前に跪くと震える声で報告する。
「ま、魔女が……!」
「魔女ならここにいる。何だというのだ」
「いえ、違う魔女、4人の魔女が、我が国の四方で何やら詠唱をしております!」
「何だと!?」
恐慌が神殿を駆け巡る。
ありえない事態に全員が自失した。
「何故魔女が……」
「一体何をしているというのだ」
勘のいい者はすぐに気づいた。
いつまで経っても魔力が整形できないのはひょっとしてこの場にいない4人の魔女が関係しているのではないかと。
だがそれに思い当たっても彼らにはどうすればいいのかわからない。
ただ焦りと恐怖が思考を走り回るばかりだ。
人知を超えた成り行きに王は言葉を失う。
その背後で水の棺に封じられた魔女が、ゆっくりと目を開けようとしていた。

「編まれし意味は楔を失いてその形を消失す。
 概念を封ぜし糸は千に分かれ空の一部を遮る。
 凍れ光よ 我が命こそ全てに勝りし現象なり」
空中に立つティナーシャは詠唱を重ねながら複雑に絡まった構成を解いていた。
ヘルギニスを支える魔法陣は城の魔法装置と東西南北の四つの要所で成っている。
彼女たちはその為同時に要所を解呪して無効化し、装置から切り離そうとしているのだ。
そうすれば後の装置だけなら破壊するなり昇華するなり処理しやすい。
時計回りに回り続ける力を少しずつ分散させながら行われる解呪は、現在のところ四箇所とも順調に進んでいた。
眼下に視線を落とせば、異様な気配に気づいたのか街の人々が外に出てティナーシャを見上げている。
彼女を指差しながら畏れ慄く者もいれば、荷を纏めて一家で街から逃げ出そうという者もいた。
「いたぞ! 魔女だ!」
ざわめきが人波を伝う中、人々をかきわけて兵士の一団が走ってくる。
彼女は彼らに気づくと左手を軽くかざした。
弓をつがえる兵士たちに向かって無詠唱で構成を組む。無形の衝撃が宙を走った。
兵士たちは次々に短い悲鳴を上げながら崩れ落ちる。
沈黙が場を満たしたのはほんの一瞬のことだった。
誰かが息も絶え絶えに喘ぐ。
「ま、魔女……本物なのか……?」
ティナーシャは闇色の瞳を彼らに向ける。
何の感情もない、氷のような双眸。目を凝らせばそこには憎悪さえ見える気がする。
そしてそれが答の全てだった。
次の瞬間、人々は悲鳴を上げながら散り散りに逃げ出した。

ルクレツィアは他の3人の魔女の首尾を感じ取りながら笑った。
彼女たちにもそれぞれ得手不得手があるとは言え、魔女の名は伊達ではない。
500年間この国を守り続け、今や飽和しかけていた守護は次々にその構成をはがされつつあった。
予定の30分まであと15分。
異常事態に慄いた街の人間は次々に都市の外へ脱出していく。
彼女はそれを留めもせず見送った。
どの道500年前、魔に閉ざされていたという土地なのだ。
それがどんなものなのかは分からないが、守護を崩してしまえば或いは人が住めない土地になるかもしれない。
そうなった時、その後のことまで面倒を見る気はルクレツィアにはなかった。
もともと禁呪を使おうなどと思う王なのだ。国が健在だったとしても遅かれ早かれ碌なことにならないだろう。
魔女は黙々と解呪を施していく。
だがその時、ルクレツィアは予想外な気配に驚いて顔を上げた。
構成の中心たる城、そこから強大な魔力と瘴気が生まれ始めていたのである。

女はゆっくりと体を起こした。
刺さっていた4本の矢が音もなく消滅する。その下には何の傷跡もなかった。
水に濡れた髪が妖しい輝きを放つ。
緑の瞳から真っ直ぐ視線が王に注がれた。
「面白いことをしてくれましたわね、王よ」
「レ、レオノーラ……」
「聖女? 異なことを仰るわ。ここには死臭が満ちている。
 500年間あなたたちはずっと、強力な魔法士の女を生贄として捧げ続けていたのでしょう?
 この装置そのものが禁呪なのね……女の魂を力として国を守る装置」
「か、彼女たちは望んで国の為に命を捧げたのだ!」
「私は望んでなどいない。魔女の報復をその身に受けなさい」
白い手が上がる。
王を庇って魔法士たちが走り出た。だがその果敢な意志とは裏腹に彼らの顔色は白い。
レオノーラの指先に構成が灯る。
しかしそれは、打ち出されることはなかった。
構成を形作る魔力は水の中に引き寄せられ、そのまま拡散してしまう。
魔女の舌打に王は喜色を浮かべた。
「魔法を使えぬ魔女などただの女だ! 殺されたくなければ大人しくしていろ!」
「ただの女? 生憎ね……私は『呼ばれぬ魔女』……魔法しかない小娘と一緒にしないで頂戴」
女は嫣然と笑いながら白い指を鳴らした。
最小限の魔力しか伴わないただの合図。
だがそれは場の勢力を完全に逆転させた。
レオノーラの左右に二人の女が立つ。
一人は蒼、もう一人は紅の髪を持つ女。人間ではありえない鮮やかなその色彩。
髪色と同じ瞳が、王を見据えた。
魔女は優しい声で使役する魔族に命ずる。
「全員殺しなさい。この国の人間全て」
冷酷な宣戦。
王は悲鳴を上げようと口を開きかける。
しかし、その声が絞り出されるより早く、彼の頭は果実のように吹き飛んだのだった。

ラヴィニアは眉を寄せる。
多くの魔族の気配。それは城を中心として増え続けている。
染み出す瘴気は魔族のものか装置からのものか分からないが、徐々にその範囲を広げつつあった。
「レオノーラか。恩知らずな女め」
魔女は十指を繰ると解呪の速度を速める。
もともと呪詛に特化する彼女はこういった作業は得意なのだ。
ただ今まで他の魔女に合わせていただけだ。
しかしそれももういいだろう。約束の30分まであと10分もない。
彼女は詠唱を重ねあっという間に西の要所を解体してしまうと、義務を果たしたかのようにその場から転移して消え去った。

均衡が崩れた。
西の要素が完全に解呪されたことを悟った白金の少女は空中で軽く首を傾げる。
腕の中に抱えたままの白い花が魔力の余波を受けて舞い散った。
彼女は城と、北と東の3箇所に視線を送る。
「面倒……」
軽くかぶりを振る彼女の耳に、夜を切って飛ぶ羽ばたきの音が聞こえる。
目を凝らすと空を有翼の魔族が飛び交っている光景が目に入った。
魔族は急降下しては逃げ惑う人々を引き裂き、持ち上げて地に落とす。
凄惨な虐殺が今まさに展開されようとしていた。
それが誰の命で為されているのか、彼女には明らかなことである。
魔女は少しだけ考えたが、結局抱えた花束を無造作に宙に放った。
花弁が夜空に紙吹雪のように舞う。
だが本来ならゆっくりと地に落ちていくはずの花びらは、一枚一枚に意志があるかのようにゆっくりと揺れながら暴れ狂う魔族へと向かった。
その白く柔らかな花弁が魔族の体に触れる。
何の構成も見えない。
しかし刹那で魔族はその場からいなくなっていた。
花弁はそのまま夜の中を踊り、次々に魔族を消していく。
それを見て少しだけ微笑んだ魔女は、南の要所の構成を全て解きほぐすとそのまま闇の中に溶け入り姿を消した。

「根性悪な女ですね。次は本当に殺しますよ」
ティナーシャは目の前に漂う女たちにそう言い放った。
紅と蒼の髪を持つ二人の女は慇懃に頭を下げる。
「主を捕らえる構成を解してくださったこと、感謝いたします」
「しかしそれはそれとして、貴女を殺すよう命を受けておりますので」
解呪の作業中、しかも二人の上位魔族と相対しても魔女は微塵も動揺しなかった。
左手に攻撃の為の構成を組み上げると、酷薄な笑みを浮かべる。
「好きになさい。死を以って忠誠を証明するいい機会となるでしょう」
崩れた均衡、暴走する装置。
小さな山間の都市国家には多種多様の膨大な力が渦巻いている。
それを留めることはもう出来ないだろう。
彼女一人に何とか出来るくらいなら最初から四人も魔女は要らなかったのだ。
ティナーシャは無詠唱で攻撃の炎を放ちながら夜を駆ける。
視界の隅に映る街には最早温かい明かりなどはなく、どこから出火したのか家々を焼く炎が、赤い舌を伸ばしながら急激に広がりつつあるだけだった。

ルクレツィアは解呪を終えると魔族を排除しながら街を一回りして、残る人間を次々適当に転移させていった。
別に彼女は善人でも何でもないが、このまま見殺しにして気分がいいものではないことは確かだ。
それでも彼女たちが詠唱を始めた時点で逃げ出していた人間も多かった為か、それ程人はひしめいているわけでもない。
放るように転移の構成を投げながら北へと向かう。
ティナーシャは確かに一番若い魔女であるが、トゥルダールの女王候補でもあった彼女の構成力は卓越している。
にも拘らず最後まで解呪が長引いていることに不審を覚えたのだ。
まもなく空中で弾ける魔力の気配が感じ取れた。ティナーシャが何かと戦っていると分かって、ルクレツィアは舌打する。
「まったく……本当に仲が悪いわね、あの二人は」
振り返って城を見ると瘴気が渦巻いている。そしてそれを取り込みながら元の持ち主に戻ろうとする魔力も。
最早レオノーラに助けは必要ないだろう。自分で何とかするはずだ。
ルクレツィアはそう判断して宙を蹴ると、妹分たる友人の下に向かって転移した。

左手に二つの構成。
ティナーシャはそれを同時に二人の上位魔族に放った。
構成は網状に広がりながらそれぞれの体に覆いかぶさろうとする。
蒼い髪の女はそれを後方に飛んで避け、紅い髪の女は魔力を伴った手で振り払おうとした。
しかしその腕は途中で止まる。それどころか持ち主の体から切り落とされ、地に向かって落ちて行った。
血に濡れた剣を揮う魔女は、愕然とする女の眼前で妖艶な笑みを浮かべる。
「悲鳴は上げませんか。さすがですね」
圧倒的な力。
研ぎ澄まされた殺意。
次の瞬間女は、至近から撃たれた強大な構成に体を隅々まで焼かれ、黒い塵となって消えた。

残された魔族は少し離れたところからその光景を信じられないかのように見ていたが、我に返ると攻撃の為の構成を組みなおした。
敵たる魔女に向かって手を掲げる。
その時誰かが背後から彼女の肩を軽く叩いた。
妙に陽気な声が掛けられる。
「はいはい、いい子になさいね」
人間の、女の声だ。
しかしそう判った時には既に、彼女の意識は闇の中に落ちていたのである。

精神魔法によってあっさりと魔族を無力化したルクレツィアは剣を持ったままのティナーシャを見てあきれた顔になった。
空を歩き年下の友人の隣に立つ。
「仕方ないわね。さっさと解呪しちゃいなさいよ」
「本当レオノーラはいっぺん締めたいですよ」
「地形が変わるからやめなさい」
ティナーシャは構成を纏わせたままの右手をかざす。
そこから力が注がれ、最後の解呪が為された。
一帯に立ち込めていた魔力が薄らぎ、消えていく。
徐々に城の中央に吸い込まれていく瘴気と、そこにある強大な魔力を感じてティナーシャは嫌そうな顔になった。
「さ、本人が来ないうちに帰るわよ」
促す声にティナーシャは頷く。
ルクレツィアが転移させたのか、自力で逃げ出したのか、いつの間にか街には人影が見られない。
夜を鮮やかに染め上げる炎。
ところどころに転がる死体。
滅びていく国の姿に、今はもうない祖国の姿が重なった。
国はなくなり、人は死に、だが彼らの魂は100年経った今も捕らわれたままだ。
ティナーシャがどんなに望んでもそれは解放してやれない。禁呪につけられた定義名が分からない限り。
それでも彼女は諦めることが出来なかった。
少しでも可能性があるのならそれに縋りたい。
人を殺すのも人ならば、救いたいと思うのもきっと人の性なのだ。
ティナーシャは感傷が満ちる瞳を閉じる。隣の魔女に囁いた。
「ルクレツィア、私……家を出ようと思うんです」
「あらそう? 別にいいけれど、何で」
「どこかに住居……塔でも構えて、そこに住もうかと。
 所在を明らかにしながら彼を探します。その方が向こうも気づくでしょうから」
淡々とした声音にルクレツィアは何か言いたげに目を細めた。
しかし言葉に出しては別のことを言う。
「なら折角だから塔に罠でも仕掛けて人間たちに挑ませなさいよ。で、達成できたら願いを叶えてあげる。
 あなたなら大抵何でも叶えられるでしょ? 面白いわよ、きっと」
「私、人間あんまり好きじゃないんですけど……」
「馬鹿ね。人間なんて色々よ、色々。ただ引きこもっているより気晴らしになるわ」
「じゃあ難易度をかなり高くしておきましょう」
ティナーシャは微苦笑すると、ルクレツィアと共に転移した。
塔を立て、彼を探す。
そんな生き方もいいかもしれない。既に本来の人の運命から外れた自分ならば。
ルクレツィアの言う通り、挑戦者を募るのもいいだろう。塔の存在を世界に知らしめることができるはずだ。
人間と触れ合いたいわけではない。そんなものは要らない。
ただ彼女が望んでいるのは、亡き祖国の本当の終わりなのだ。
四人の魔女がいなくなった街を、炎の舌が焼いていく。
やがて炎が収まりかけた頃、城からすさまじい白光が迸り、一帯全てを飲み込んだ。
後にはただ瓦礫だけが残り…………そしてこの日、ヘルギニスは歴史から姿を消したのだった。

北西の小国の滅亡は、魔女と禁呪の忌まわしさを世界へ伝えた。
大国に抵抗しようと禁呪の研究を進めていた小国たちはその研究を放棄し、己の道を模索することを選んだ。
そしてヘルギニスの消滅を最後に暗黒期は終わる。
次に始まる時代は魔女の時代と呼ばれ、呼ばれぬ魔女が死亡し、青き月の魔女がファルサス王家に嫁いで時代の幕が下りるまでの300年間、
大陸は異質な女の力に慄くこととなったのである。