ふさふさ

禁転載

「レアって何歳に見えるんだろうな」
「え?」
二人で転々と辺境の町や村を旅する途中、新たな村に宿を取ったアージェはふとそんなことを洩らした。小柄な彼女をまじまじと見下ろす。
今の彼女の実年齢は二十四歳。だがその外見は二十そこそこか、下手をしたら十代に見える。
むしろ外で苦労を経験してきたアージェの方が年上に見えるくらいだ。
レアリアはそれを聞いてぶすっとした表情になった。
「それって」
「体型の話じゃないから」
いい加減彼女とは長い付き合いでるアージェは、先手を取ってレアリアを黙らせる。
「まぁ成長が停滞してた時代があるから、そのせいだろうな」
「うう」
寝台に座ったアージェは、じたじたと暴れる女の髪を引いた。レアリアは不服そうな顔ながらも彼の隣に座る。
「大した問題じゃない。俺が気をつければいいだけだから」
「気をつける? どうして?」
「身分がありそうな十代の女を俺みたいのが連れてると、誘拐と思われたりする」
「…………え?」
「さっきすれ違った村の人間がそんなこと言ってた」
一生のほとんどを城の中で過ごしてきたレアリアは、そういう世間の見方がさっぱり分からない。
予想外な答に青ざめて頬を押さえる彼女を、アージェはまたまじまじと見下ろした。今は一つに髪を結んである頭に手を乗せる。
「何か聞かれたら結婚してるって言えばいいよ」
「え……ええ!? ええええ!?」
「いや、他の言い訳でもいいけど。適当に」
「いいいいの!?」
真っ赤になって見上げてくる女を、アージェは軽く驚いて見返す。
ふるふると震えている彼女が、まるでふさふさ尻尾を揺らしているように思えるアージェは、思わず噴きだすと「実質そんな感じだろ」と恋人に口付けたのだった。