禁転載
寝起きは頭の回転が遅くて困る。
―――― そう思いながらレアリアは、己の騎士に言われた通り服を脱いで浴槽に浸かった。
昨晩寝る前の記憶を思い出そうとする。
「ああ」
そう言えば周囲の人間を誤魔化す為に彼に協力してもらったのだった。
それで朝、彼に起こされたのかとレアリアは納得する。後で改めて礼を言おうと、ぼやけた頭を振った。
お湯の中に浸けられた体は少しずつ芯から温まってくる。彼女がしばらくそうしていると、浴室には女官たちが入ってきた。
朝の挨拶を済ませ主君の体を洗おうとしてくる女官たちに、レアリアはようやく湯船から上がる。
そうして白い石段に腰掛けた時、彼女はふと自分の足にある痣に気付いた。
左足の膝より少し上、内側についている小さな痣は、けれどいつどうやって出来たものか記憶にない。
このようなところをぶつける機会があっただろうかと、レアリアは首を傾げた。
何とはなしに上から指で押してみたが、別に痛むわけでもない。
長い髪を女官の手に任せつつ痣を見ていた彼女は、似たようなものが胸元にもあることに気付いた。さすがに気になってすぐ横にいた女官に問う。
「ねえ、これ昨日はなかったわよね?」
どうして覚えのない痣が複数あるのか。眉を寄せての確認は、しかし曖昧な微笑によって返された。
女官の反応を不審に思ったレアリアは、更に女たちを問い詰めて―――― それが何であり、何処にいくつ存在しているのかを聞く。
理解した瞬間、彼女は悲鳴を上げた。
「ア、アージェ! ああああああ!」
「何だよ。怒るなよ。あれくらいしないと誤魔化せないだろ」
「む、胸が、胸が!」
「見てない見てない」
「そ、そう? じゃなくて、それだけじゃなくて! 胸が!」
「胸の大きさとかに話題を拡大するのはやめ―――― って殴るなよ!」
「アージェの馬鹿!」
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