禁転載
ダニエ・カーラが目覚めてからしばらくは、彼女はアージェの中で煩く騒ぎ続けている。
だからこそ彼は、残滓となっても魔法のような力が使える彼女を出来るだけ呼び起こしたくないのだが、やむをえず起こしてしまった以上は仕方ないだろう。
ケランから離れる移動中、ある食堂に入ったアージェは、頭の中でぎゃあぎゃあと騒ぐ彼女に顔を顰めた。
「いいからちょっと黙ってろっての」
(だって、あそこの女、目つきが気に入らないもの!)
「俺はお前の発言頻度が気に入らないよ」
(カルド、外に出して)
「絶対駄目」
(けちけちけーちけちけちけち!)
「今ちょっと本気で消滅させたくなった……」
(けち)
他の人間には聞こえない女の声は、アージェに頭痛を誘って仕方ない。
彼は食堂の隅で不審に思われぬよう、その後は黙々と出された食事を口にした。
そろそろ食べ終わろうかという頃、再びダニエ・カーラは騒ぎ出す。
(お酒! お酒!)
「俺、別に好きじゃないし」
(けち! カルドは私の言うこと否定しかしないんだから!)
「たまには肯定されるようなこと言ってみろ」
(クレメンシェトラを殺していい?)
「駄目。第一あいつはクレメンシェトラじゃないの」
(ひいき! ひいき!)
「はい、そろそろ寝ろよ。いい加減しんどい」
一度目覚めればおおよそ一週間は起きている女の意識。
アージェのそれとの戦いもあと数日は続きそうである。
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