双頭の蛇 08 のおまけ

mudan tensai genkin desu -yuki

何度言ってもティナーシャは豹から猫に戻ってくれなかった。かろうじて撫でて怒って宥めすかして何とか子豹になってくれたくらいだ。
大きさとしては間違っていないのだからここは妥協点だろう。ラジュは子猫ならぬ子豹を頭に乗せて砦に戻った。
夕食を取る為食堂に向おうとして、デファスとガートに出会う。
「お、今日は猫連れか」
「散歩から帰ってきたところでして」
砦の食堂は猫を連れて入っても怒られないが、はたしてティナーシャは猫の食事の量で足りるのだろうか。
悩んで一応本人に聞いてみようかと思った時、だがデファスがティナーシャを見て首を傾げた。
「何かその猫、顔変わってないか」
「気のせいです」
「朝まで猫だったよな」
「今も猫ですよ」
「豹に見える」
「そんな馬鹿な。猫です」
わざとらしい答を返すと、頭の上の子豹は音もなく飛び降りてあっという間に廊下の向こうに駆け去っていく。
それを三人はそれぞれの表情で見送った。ややあってデファスが口を開く。
「人、食わないよな?」
「だから猫ですって」
ここは猫で押し通すしかない。断固としてそう決めたラジュに他の二人は何か言いたげな顔をしたが、結局そこで話題は打ち切られ、彼らは夕食の席についたのだった。