mudan tensai genkin desu -yuki
「何というか……不思議な取り合わせですね」
記憶が戻ってからまもなく、臣下の二人から結婚の報告を受けた妃は、夫と二人になると率直すぎる感想を洩らした。オスカーは含み笑いでそれに答える。
「そうでもない。ちょうどいい取り合わせだと思うぞ」
「うーん。私がいなかった間に何かあったんですか?」
約五年の空白は、長すぎるという程でもないが短くは決してなかった。
久しぶりの城内で少しずつ変わっているものを確認する度、ティナーシャはその月日を思うのである。
彼女を膝に乗せて髪を弄っている男は、青い瞳の中に苦いものを浮かべた。
「シルヴィアは仕事はきっちりしてたが、影でいつも泣いてたみたいだな。よく目が腫れてた」
「…………」
「パミラはいなかったし、ドアンやカーヴは逃げるからな。一人で泣いてるのを気にしてるうちに情が移ったんだろ」
「―――― なるほど。色々あるんですね」
「そのようだ」
娘に習ったのか、器用に妻の髪をみつあみにしていく男をティナーシャは呆れた目で見やる。
まったく彼の興味はどこに移るか分からない。「やってみたかったから」と言って時々変なことに手をつけたりするのだ。
「私も貴方と結婚した時、何でだろうって思いましたけど……」
「おい」
「結局、何回やり直しても貴方以外は対象にならないんだから不思議です」
「何のことだ?」
「そのうち分かりますよ」
それはもうない時の話だ。
自分にとって彼の他にはいないように、彼らもお互いがそうでなければいけない理由があるのかもしれない。
だがそれは言葉にして上手く説明できるようなものではないのだろう。現に彼女自身もそれができないでいるのだから。
「また次に出会っても私を選んでくださいね」
今はまだ謎めいた言葉。
しかし王は少し驚いたように目を瞠ると、「考えるまでもないな」と彼女の頭を撫でたのだ。
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