箱庭遊び

mudan tensai genkin desu -yuki

その日買ってきたものは、いわゆる「箱庭セット」というものだった。
寮の机に箱の中身を広げたアキラは、パーツに欠品がないか箱書きと照らし合わせ始める。
シリーズ第七弾の「東明峰大学」は、その名の通り同名の大学をそのままミニチュアにしたセットだ。
七つの校舎と礼拝堂、そして構内公園は、どれも機能的な美しさを持っており、その筋ではかなり評判高い。
アキラは一つ一つのパーツを並べて、細かい出来を確認していく。
塗装が甘いところが見つかれば手を加えようと思ったその時、彼は頭上からの視線に気づいた。
「シェラ」
空中に漂う少女は、興味深々の目で建物のパーツを眺めている。
彼女はアキラが持ったままの箱の蓋を見て「大学?」と問うた。
「そう。第八都市じゃ一番大きい大学だな」
「並べて遊ぶんですか?」
「……まぁ、うん」
言葉にされない微細なニュアンスが異なっている気もするが、並べようと思っているのは本当だ。
全てのパーツをビニールから出してしまったアキラは、同梱の説明書をシェラに手渡した。
「やってみる?」
「いいんですか!」
先程から彼女がきらきらと興味ありげな目で見てきていることは分かっている。
弄ってみたくて仕方ないのだろう。シェラは机のすぐ上まで下りてくると、手をあげて一番大きな校舎に触れた。
彼は土台にする用のプラスチック板を引き出しから取り出す。
「この上に置けばいいから。あとで接着してやる」
「ありがとうございます!」
さして大きくもない机をシェラに明け渡すと、彼自身はベッドに座った。本を読む振りをして彼女の様子を一瞥する。
―――― 覚束ない手つきで一つ一つのミニチュアを手に取る少女は、どう見てもままごとをしているようにしか思えない。
だが楽しそうであるのだから、それはそれでいいのだろう。
本物とまったく同じに配置して、エイジング加工を施すつもりだったアキラは、自由に並べられていく建物に苦笑いする。


「アキラ! できました! これでいいですか?」
「りょーかい。いいんじゃない? 出来上がったらシェラの好きなところに置いていいよ」
「じゃあ天井に貼ってもいいですか?」
「それはちょっと……ホラーだろ」